むし歯は「細菌」「砂糖」 「飲食回数」 「唾液の質」など、複数の要因からなる複合疾患です。患者さん個々によりリスク因子が違うため、一人一人に合わせた予防指導とリスク因子のコントロールが大切です。そのため当院では、担当の歯科衛生士が、まず患者さんをきちんと知り、むし歯を未然に防ぎ、ご自分の歯を残せるようサポートしております。
原因1:細菌
むし歯ができる原因の1番目は、細菌です。むし歯の原因細菌は、顕微鏡を使って見るとよくわかります。むし歯菌の代表的な菌には、「ミュータンス菌」というむし歯をつくる菌と、「ラクトバチラス菌」というむし歯を進行させる菌があります。ミュータンス菌は、唾液から感染し、親から子どもへの口移しで食べさせたりすることで感染します。
原因2:砂糖
原因の2番目は、砂糖です。砂糖は、歯垢(プラーク)の中に棲むミュータンス菌の大好物です。ミュータンス菌が砂糖を分解して酸に変え、その酸が増えることによって歯の表面の成分であるカルシウムとリンが溶け出してしまいます。これを脱灰(だっかい)といいます。(酸が増えるとpHは低下し、酸が減るとpHは上昇します) このように砂糖は、お口の中に酸を増やし、歯が溶かされる原因をつくってしまいます。
原因3:飲食回数
原因の3番目は、飲食回数です。飲食回数が多いとむし歯になりやすく、少ないとむし歯になりにくいです。なぜなら、食事をとると、口の中は酸性(pHが低く)になるため、歯の表面の成分であるカルシウムとリンが溶かされはじめます(脱灰)。ふつう40分くらい時間がたつとpHは高くなり、溶かされたカルシウムとリンは元に戻ってきます。これを再石灰化といいます。しかし、酸にさらされる時間や回数が多いと、歯の脱灰が続き、むし歯が進行してしまいます。お口の中は基本的に中性の状態に保たれています。食事(甘いものに限らずカロリーのあるもの)をする度に、酸性になり歯が溶け(脱灰)、その後元の中性の状態に戻る(再石灰化)を繰り返しています。
1日3食の方の場合は、まず朝食を食べた時に歯が溶けます。そして2時間後に元の中性の状態に戻ります。その後しっかり戻りきってから昼食の時に溶ける、その後もしっかり戻りきってから溶ける、を繰り返すので溶けている時間よりも、溶けていない・戻っている時間の方が長くなります。このような食生活の方はむし歯になりにくいです。
しかし、溶けた歯が戻りきる前に再度食事をして歯が溶ける、食事をして溶ける・・・といったことを繰り返すと、溶けていない時間よりも、溶けている時間の方が長くなります。こういった原因から歯が溶け続けてしまい、ハミガキをしていてもむし歯になってしまうのです。
原因4:唾液のはたらき
原因の3番目は、唾液のはたらきです。上記でお伝えした脱灰と再石灰化には、唾液が大きく関係していて、唾液には大きく4つのはたらきがあります。 1)中和する力:唾液には、酸を中和してpHを元に戻そうとする力があります。 2)自浄する力:口の中に入ってきた食べ物を押し流して、歯の表面に食べ物を停滞させない力があります。 3)抗菌する力:唾液中には免疫物質が含まれていて、細菌感染から粘膜を守る力があります。 4)歯を補修する力:唾液の中には歯の成分と同じカルシウムやリンが含まれており、酸によって溶かされたカルシウムやリンを補う力があります。
唾液の4つのはたらき度合いは、人によって個人差があります。唾液検査で調べることでき、自分自身または家族の唾液の性質を知りリスクを把握しておくことで、むし歯予防の個別プログラムを立てることができます。
▼唾液検査でわかること